オイル塗料(自然塗料)について

自然塗料はビジネスチャンス

自然塗料ばやりである。シックハウス症候群、化学物質過敏症などの追い風?を受けてあちこちで目にするようになった。西独のオスモ、アウロ、リボスなどが有名だがかなり高価である。そんなわけで国内でも自然塗料を売り出すメーカーや個人が現れたがまだ価格が高いと思う。私もオイル塗料を作って仲間に分けたりしているが1リットル2500円ぐらいのものである。このうち原材料代は約1/3ぐらい。

自然塗料というと、貴重で高価なものと思いがちだが、昔からある素材を見直して調合、加工したものであり、原材料も植物性だというだけでさほど高価なものではない。まあとにかく、今後需要が拡大していくのは確実な市場である。リストラされたあなた!チャレンジしてみませんか。木工なんかよりもうかりまっっせ。

食材好きの奥さんのお供であちこち付き合わされると、とりあえず食用油コーナーをチェックする。輸入食材や業務用食品店に割りとあるのがフランス産のくるみ油。500ml1050円程度でお手頃だ。アーモンド、ヘーゼルナッツ、カシュウナッツ、パーム、アボガド油などよくわからないが使ってみたい(使えなっかたら食べられるし)ものもある。あとは無印良品の大きな店舗にあった食用あまに油。これは圧搾絞りとのことでちょっと高い。

圧搾絞りとは、原料から油を抽出する時に、圧力をかけるだけて搾り出す昔からの製法。現在のほとんどの植物油は食用、工業用どちらもより多くの油を抽出するために溶剤を使っている。これは製造過程で蒸発させてしまうので、食品表示には載せなくていい事になっている。木材塗装ではここまで気にしなくてもいいとは思うが、もし、自分の子供に木のおもちゃを作ってあげたときの塗料を何にするか考えたら、たとえ高価でも、安全、安心を第一に考えるでしょう。

有機JAS 食用亜麻仁油237ml
作品に塗るオイル塗料の種類をおおまかにならべてみた。
  オイル塗料の種類 材料 いいところ 悪いところ 用途
植物油そのままを塗るタイプ 食用油 クルミ、エゴマ、食用アマニ油、その他 安心,安全 なかなか乾かない、いつまでもべとつく おもちゃ、食器
①工業用乾性油 桐油、アマニ油、エゴマ、その他 安心 けっこう乾かない 家具クラフト
蝋分を加えてWAX(固形、ペースト状)にしたタイプI ①+カルナバ、蜜蝋、その他=② 安心蝋分が表面をさらっとさせる 固形タイプは表面に白く残りやすい 家具クラフトお手入れ用
溶剤を加えて使いやすくしたタイプ ①または②+塗料用シンナー、テレピン油、無臭シンナーなど=③ 溶剤が蒸発してしまえば安心。溶剤によって薄く塗り伸ばせるので使い勝手がよい。 作業中溶剤蒸気を吸ってしまう。 家具クラフト
乾燥剤を加えて乾きをよくしたタイプ ③+金属石鹸(コバルト、マンガン、亜鉛、鉛、ジルコニウムなど)=④ 鉛を使ってないものはまあ安心乾きが速く作業性がよい 作業中溶剤蒸気を吸ってしまう。 家具クラフト
樹脂を加えて塗膜を強化したタイプ ④+ウレタン、ロジン、アミノアルキド、コーパルなど 鉛を使ってないものはまあ安心、テーブルトップ向き 作業中溶剤蒸気を吸ってしまう。樹脂分が強いと合成樹脂塗料とあまり変わらない 家具テーブル

5年ほど前にオイル塗料を自作するようになってから、市販の塗料は買っていない。ので市販品についてどうのこうの言えない。自分では、木のおもちゃにクルミ油+カルナバ蝋の半固形WAX。クラフト、家具には自家製オイル、または自家製オイルWAX入りを使っている。

以前はサンマルーフみたいにウレタンニスを混ぜて使っていた。速く乾いて強いのだが、臭い。シンナー臭だけでなくニスに入った乾燥剤のせいだろうか。体に悪いような気がしてやめた。市販のウレタンニスには、乾燥剤として鉛が入っている。西独製の塗料にも乾燥剤が使われているものがあるが、カタログを見ると無鉛乾燥剤と書いてある。コバルト、マンガン、亜鉛は最近よく聞く、体に必要な必須ミネラルでもある。だから使ってもいいのかはよくわからない。しかし、乾燥剤を使うと劇的に速く硬化をはじめる。

亜麻仁油あれこれ

オイル塗料を自分で作るようになったきっかけは、工房を始めた頃塗装仕上げはどうしようと考えていた時に、水上のHさんの作った自然塗料と蜜蝋ワックスを分けてもらった事。へえ、自分でもつくれるんだあと感心し、作ってみたくなった。たまたま書店でホルベイン工業の絵具の科学絵具材料ハンドブック を見つけて、オイルフィニッシュ塗料と油絵の具に使われる原材料がほとんど同じ事を知った。それから、前橋の化学材料を扱う薬局に出かけては社長に相談してあれこれ材料を取り寄せ、加熱したり、調合したり、日に当ててみたり、濃度を変えてみたり。

ガラス板にサンプルをたらして、表面に膜が張るまでの時間を計ったり、これを調合を少しずつ変えて何十パターンもやった。1ヶ月ぐらい、仕事そっちのけで遊んでいた。楽しかったな。それで、現在も作って、使っているのは3種類ぐらい。売っているのは1種類。性能は自分で言うのもなんだが、よくも悪くもない。使いやすくてリーズナブルだとは思う。
オイルフィニッシュについては詳しいHPが他にあるので、ここでは亜麻仁油についてだけちょこっと書いておく。

亜麻仁油の6変化?

亜麻仁油はオイル塗料の主成分で乾性油のなかでは安価である。生だけではなく、性能アップの為いろいろ加工されて利用されている。

生の亜麻仁油

生の亜麻仁油は臭い。黄色みが強く、少しだけトロンとした濃い油という感じ。ガラスにたらして日に当てると半日ぐらいで表面に膜が出来るが、室内に置いたのではなかなか固まらない。固まると黄変する。乾性油(オイル塗料)を固まらせるには、紫外線(日光)、温度(温かい事、せめて20度以上)、空気(酸素、風通しのよいこと)が必要である。また、乾性油(オイル塗料)の固まり方は、まず、空気に触れた表面が膜を作り、次に内部がゆっくり固まってゆく。

日に当てた亜麻仁油(サンブリーチオイル)

広口ガラス瓶などにフタをせず、亜麻仁油を入れて日に当てる。1週間から1ヶ月、だんだん黄色みが抜けて薄いレモン色に変わる。これが漂白(ブリーチ)されたということなのか。さらに半年。表面には分厚く膜が張り、中はハチミツのようにとろっとしている。

水面に薄く垂らして日に当てた亜麻仁油(サンシックンド)

現像に使うような平皿パッドに水を入れて、その上に亜麻仁油を張って日に当てる。乳化しやすい油になる。これも試しにやってはみたが、取り出す時に水と分けるのが難しい。

空気に触れさせずに高温加熱した亜麻仁油(スタンド油)

高温(300度)で長時間加熱するのは怖いのでやってない。買ったほうが楽。生ではバラバラの油の分子が、加熱によりたくさんくっついた状態になっているので、ねばっこい。半乾き状態。このまま塗るのは困難。

空気を吹き込んで加熱した亜麻仁油(ボイル油)

これもやったことないないけど、4との違いは、分子が酸素を介してくっついてる状態になっていること。

ロジンと混合加熱してワニス

ロジン(松脂)と乾性油を混合し加熱してゆくと、分離しないひとつの樹脂のようになる。これをサラダ油でやると白濁して分離してしまう。理由はわからないが、昔から使われていたものらしい。ロジンが多いとべたつく感じがでてくる。乾性油だけの時よりも乾燥は遅い気がする。

亜麻仁油はどう使うか。

例えば、生で塗るよりは1ヶ月ぐらい日に当てて放置してから、不要な鍋で煙が出るぐらい加熱し、やけどしない程度に冷めた熱い状態のものを直接塗るのが理想かもしれない。しかしこのように、途中まで乾燥を進ませた乾性油は、さらに粘度があがってしまい、使いにくさも出てくる。

塗料用シンナーは揮発してしまうのだからと割り切って、 シンナーで薄めて使えば、格段に作業しやすくなる。安全性、作業性、乾燥の速さ、耐久性。今のところはケースバイケースで、対応している。

私の安価なオイル塗料のユーザーも、リピート率はあまり高くない。ユーザーはオイル塗料について学習、経験を積むと、市販品に移行してしまう。ブランドイメージも強い。お客さんにオスモを使ってます。といえば、最近のお客さんは、自然塗料について、知識を持っている方がおおいので、それで納得、安心してしまうのだ。


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