針葉樹と広葉樹の違い

針葉樹と広葉樹

木の種類を針葉樹と広葉樹に、単に文字どうりの葉っぱの形で分けて説明するとわかりやすいようだが、実際はもうちょっと複雑。それぞれに、落葉針葉樹、常緑針葉樹、落葉広葉樹、常緑広葉樹がある。落葉とは寒い時期に葉を落とし、暖かくなると新芽をだす事。常緑とは古い葉を残したまま新芽がでてきて、徐々に葉が入れ替わり、ハゲ坊主の時期がない事。常緑樹は一年中光合成のできる暖かい南の地方に適している。落葉樹は寒い冬に耐えられるので北の地方に適している。また、針葉樹の方が寒さに強い。それと標高。標高が高いほど生育条件が厳しくなる。小さな日本も南北に長く、山もあり、海にも囲まれ、実にいろんな木が自分達の生育できる環境を求めてがんばっている。

針葉樹と広葉樹の強度の違い

針葉樹の細胞組織は主にストローを束ねたような仮導管を主にしていて、これが木を支える役目と水分などを運ぶパイプ役を兼ねている。春夏の成長の早い時は太い細胞(スカスカで柔らかい)をつくり、秋から冬にかけて成長の遅い細胞(細かくて硬く色が濃い)を作る。これが毎年繰り返されて年輪になる。

広葉樹の細胞組織は針葉樹より複雑で、木を支える組織とパイプ役が別れている。パイプ役は導管と呼ばれとても太い。広葉樹にも季節の成長の違いで針葉樹と同じように年輪(成長輪)が出来るが、針葉樹ほどはっきりしないものが多い。欅などはこの年輪に添って導管が並ぶので、これが年輪のように見えている。樺のように導管が全体に散らばったものもある。また、幹の中心から樹皮に向かって伸びる放射組織も針葉樹より発達している。

植物学的にどうとか、細胞がなんだとか言いたいわけでない。実際に家具用材などに使う場合にその木が生育した環境がどう影響するかという話。成長の早さの違いが針葉樹と広葉樹では異なって現れる。

成長が早いほど 成長が遅いほど
針葉樹 柔らかくなる 軽くなる 強度が落ちる 狂いやすい、割れやすい 硬くなる 重くなる 強くなる 狂いにくい、割れにくい
広葉樹 硬くなる 重くなる 強くなる 狂いやすい、割れやすい 柔らかくなる 軽くなる 弱くなる 狂いにくい、割れにくい

針葉樹は細胞組織が単純で、空洞が多い。比重も軽めで乾燥が進めば狂いが少ないが、成長が早すぎるとさらに春材が多くてスカスカになる。広葉樹は成長が早いと木部の組織ばかり発達してカチカチになる(石ナラなど)が、成長が遅いと導管の占める体積(空洞)が増えて軽くなる。あまりに遅いとスカスカで弱すぎて使えない(ぬか目)。

要するにどちらも成長の早過ぎ、遅過ぎの木は要注意。理想では程ほどに成長の遅い木が使いやすい。具体的には年輪幅が1~3ミリぐらい。しかし実際には年輪幅5~7ミリ、たまには10ミリぐらいのも使うことはある。

木の成長は環境で決まる。

気温が高く、湿度が高く、日当たりがよい程、成長が早い。具体的な環境としては

地方 標高 降水量 育ち方 日当たり 生い立ち? 土壌
成長が早い 低い(平地) 多い 一本立ち 南斜面 植林された 腐葉土がある
成長が遅い 高い(山) 少ない 森、林 北斜面 自然に生えた 岩地、砂

などが考えられる。もちろん樹種にもよる。

北限の木

植物学者の研究で、様々な樹種で生存限界(その木が自然な状態で芽を出し成長、生存できる限界の気候)が調べられている。例えば、楠や樫の木(常緑広葉樹)は、おおよそ関東北部ぐらいが北限で、東北や北海道には生えない。ブナでは北海道南端付近が北限とされている。用材としては成長が遅い方がいいので、そこそこ厳しい環境で育った北限に近い木の方が望ましい事になる。例えば、木曾の桧、秋田杉、青森ヒバ、北海道のミズナラ、東北のブナ。

山の木がいい

山を登っていくとまず、杉や桧の人工林やコナラなどの雑木林、次にブナ、ナラ、白樺などが現れ、2000mくらいになるとモミ、ツガなどの針葉樹が主体となり、やがて高山植物や低木類ばかりになる。平地にはかろうじて残った雑木林、屋敷林、神社やお寺の木、街路樹。こういった木が支障木として、時折伐採され市場に持ちこまれたりする。あるいはいただく事がある。欅、楠、いちょう、桜など。ほんとによく育っていて硬いし割れる。欅などは建材にはいいのかもしれないけど。日本は雨、雪が多い。特に多いのが、紀伊半島と屋久島。屋久島を縦走したことがあるが、この辺の山とはまったく違う。生命力に圧倒される。屋久杉だけでなく他の木もでかい。森は深く、水があふれ、苔むしている。

育ち方

周囲が開けていると、早々に枝を広げようとする。森の中のように木に囲まれていると、日光を求めてまず、上へ上へと伸びる。根元から最初の枝までの、用材として一番いい幹の部分が長くなる。だから、人工林では杉や桧をワザと密集させて植林し、成長と共に間伐する。

お勧め本など
図説日本の植生 新しい樹種の剪定と育て方

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